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債権回収の手続強化 (2020.3.26掲載)
令和2年4月1日から、改正民事執行法の施行により、 債権回収のための債務者の財産調査が実施しやすくなります。
(1)債務者の財産開示手続の見直し
債務者の財産に対して強制執行(差押え)をするには、
債務者の財産を特定して裁判所に申立てをする必要があります。
判決など(債務名義)をもっていても、債務者の財産が分からない
場合のために、民事執行法では、債務者を裁判所に呼び出し、
どんな財産をもっているかを明らかにさせる手続きがあります。(財産開示手続)。
改正では、この財産開示手続きがより使いやすく強力になりました。
(ポイント1)
強制執行に必要な債務名義を有していれば誰でも申立が可能になりました。
すなわち、確定した確定判決等だけでなく、仮執行宣言付判決、
支払督促、執行受諾文言付公正証書(執行証書)なども申立可能となりました。
(民事執行法197条1項)
(ポイント2)
債務者の不出頭に対する罰則が強化されました。
すなわち、正当な理由なく財産開示日に出頭しなかったり、
宣誓を拒んだ開示義務者や、宣誓したものの財産開示の陳述
をしなかったり虚偽の陳述をした開示義務者は、6か月以下
の懲役または50万円以下の罰金に処せられることとなりました。
(民事執行法213条1項5号、6号)
(2)第三者からの債務者の財産・勤務先に関する情報取得手続の新設 (民事執行法204条~211条)
債務者以外の第三者からも債務者の財産に関する情報を得られるようになります。
裁判所に申立をして、債務者の財産に関する情報のうち、
預貯金については銀行等に対し、
不動産については登記所に対し、
勤務先については市町村・年金機構等に対し、
情報の提供を命じてもらうことができます。
ただし、不動産と勤務先に関する情報取得手続については、
それに先立って債務者の財産開示手続を実施する必要があります
(預貯金についてはその必要はない)。
また、勤務先に関する情報取得申立は、
養育費の支払や生命又は身体の侵害による損害賠償金の支払を内容とする債務名義を有している債権者に限られます。
登記申請業務とQRコード (2020.1.31掲載)
令和2年1月14日から、不動産の登記事項証明書やインターネット登記情報にQRコードが追加されました。
法務省オンラインシステムの「申請用総合ソフト」で申請書を作成する際、QRコードを読み込むことで,物件情報が楽に入力できます。
商業・法人等の登記事項証明書,印鑑証明書などにもQRコードが追加されました。
なお、既に登記識別情報通知にもQRコードが記載され、オンライン申請する際、申請用総合ソフトで登記義務者の登記識別情報様式を作成する際に、QRコードを読み込むことで、楽に入力できます。
とても、申請準備の負担が軽くなりますが、バーコードリーダーが必要です。
コンビニ交付の住民票、印鑑証明書への対応について
個人番号カード(マイナンバーカード)の普及によりそれを利用して、コンビニで、住民票や印鑑証明書を取得され方も増えてきているようです。
登記申請の添付書類として使えますが、役所の窓口で発行されるもののように役所独自の用紙ではなく、
白紙の用紙に印刷されるため、真正なものであるか目でみるだけでは判別しにくくなっています。
不動産売買など大きなお金が決済される場面で、登記申請に必要な書類が揃ったことを確認したうえ、当事者に代金決済に進んでよいことを宣言する司法書士としては、
万一、(両面カラーコピーなど)真正な印鑑証明書ではなかった場合のことを想像すると、怖くなります。
そこで、コンビニ交付の証明書には、偽造・改ざんの防止処理がされています。
(1)表面のけん制文字
コピーすると「複写」と浮き出る(ただし、目視ではやや分かりにくい)
(2)裏面にスクランブル画像・QRコード
表面の証明事項に暗号処理を施したスクランブル画像が印刷されている。
スキャナーで読み取りパソコンに保存し、インターネットの問い合わせサイトで照会すると
裏面の暗号が解除された画像(表面と同じ画像)がパソコン画面に表示され、改ざんがないか確認できる。
(ただし、これは裏面のコピーでも確認可能なことに注意。)
(3)裏面に偽造防止検出画像
裏面左下にカラーで桜の花柄の画像が印刷されている。
この可視画像には潜像画像があり、特殊な画像確認器具(赤外線カメラ)を利用することで確認できる。
潜在画像は、「証」の字が浮き出て見える。
(コピーした証明書には潜像画像がでない。)
(3)の潜在画像確認には、赤外線カメラなどの器具が必要で、具体的には、USB接続Webカメラや
赤外線照射機能付きのドライブレコーダーがそれに該当するようです。
民法改正について
相続法関係
平成31年1月13日から施行済の事項
自筆証書遺言の方式緩和(財産目録添付の方式)
令和元年7月1日から施行済の事項
遺産分割等に関する見直し
持戻し免除の意思表示推定、遺産分割前の預貯金の払戻し制度、遺産の一部分割、
遺産分割前に遺産が処分された場合の遺産の範囲
遺言執行者の権限の明確化
遺留分制度の見直し
金銭債権化(遺留分侵害額に相当する金銭の請求権)、算定方法の見直し等
相続の効力等に関する見直し
権利の承継(対抗要件主義適用)、債務の承継、遺言執行者がある場合における
相続人の行為の効果等
相続人以外の貢献を考慮するための方策(特別の寄与の制度)
令和2年4月1日から施行の事項
配偶者居住権、配偶者短期居住権
令和2年7月10日から施行の事項
法務局における自筆証書遺言の保管制度
債権法関係
令和2年4月1日から施行(ごく一部の例外を除き)
社会・経済の変化への対応と、判例や通説的見解など現在実務で通用している
基本的ルールの明文化のため、多岐にわたる改正があります。
”おすすめ!” 参考図書の紹介
「一問一答・民法(債権関係)改正」 (必携)
商事法務
法務省大臣官房審議官 筒井健夫、
法務省民事局民事第二課長(元法務省民事局参事官)村松秀樹 編著
「解説 民法(債権法)改正のポイント」
有斐閣
大村敦志・道垣内弘人 編
「一問一答・新しい相続法」 (必携)
商事法務
法務省民事局民事法制管理官 堂薗幹一郎、法務省民事局総務課長 野口宣大 編著
「3時間でわかる 図解 民法改正」
(難解な条文を図で理解)
日本経済新聞出版社
(債権関係です。)